研究課題

目標

計画

成果

 

研究活動の達成目標
 

極端気象は、急激変動かつ局所的特性を持つ異常気象、あるいは広域・長期変動を示す慢性的気象ハザードとして顕在する。その科学的理解と社会的適応策に焦点をあてた2つの研究課題を推進する。

 

課題(1):極端気象・水循環と災害の監視・予測に関する理工融合研究

極端気象の精密な動態と詳細メカニズムは未解明である。地上観測・衛星データ・数値モデル等を駆使して、大気現象の特性を理学的に理解する。同時にそれに伴う水循環変動、河川・海岸・斜面災害の工学的研究を進める。これら理工研究を統合し、極端気象の監視・予測システムを開発する。その成果を日本はもとよりアジア・アフリカ諸国に適用する。

 

課題(2):異常気象及び慢性的気象ハザードへの社会的適応策に関する文理融合研究

地球温暖化により極端気象の強度と頻度が増え、さらに水循環にも長期的変動が起こると予測されている。変動幅が一定レンジ内にある安定した自然環境に密接にリンクして形成・維持されてきた生活・社会・文化に対して、異常気象による環境変化が第一次産業を中心とした生計手段に与える影響、生業放棄や都市部等への人口移動、さらに伝統的家族形態や生活習慣の変容を解明する。

 

⇒ 理工融合研究を展開しつつ、極端気象に対する適応策の人間・社会科学的な研究を推進して、地球社会の厳しい生存環境における知を体系化する。本事業開始後、「極端気象と適応社会の生存科学」教育ユニットを設立し、事業終了後もこの教育研究を継続的に実施する確固たる体制を築く。

研究計画

課題(1): 極端気象の観測、数値モデル、災害予測に関する下記の3つのサブテーマを実施する。

 

(a) 現象の観測監視: 国内外の事業展開拠点でフィールド観測を推進し、国内外の若手の教育の場として災害観測監視技術の普及に活用する。極端気象に適した観測システムの開発を目指し、大気レーダー等に関する産学連携研究をさらに発展させる。衛星による広域監視では、静止気象衛星データを用いた災害監視、GPS電波掩蔽測によるメソ気象の研究、宇宙ステーション・SMILESによる大気微量成分観測などの最新技術開発を推進する。これら新世代の観測監視の研究のいずれも、国内はもとより、アジア・アフリカ諸国からも大学院生・若手研究者に参加させる。

 

(b) 数値気象モデルによる異常気象予測: 日本を含むアジア・アフリカ域で気象研究所等と共同で進めてきた高分解能数値気象予報モデルの適用研究を進展させる。特に、集中豪雨で代表される極端気象のダウンスケール予報実験を行い、地上観測・衛星データによる現象の観測監視結果の同化インパクトを評価する。極端気象の予測可能性を科学的に追求し、同時に予報情報の高度利用による災害対策判断支援を試行する。多発する気象災害への対策が遅れているアジア・アフリカ諸国に数値予測技術を普及すべく、高度人材ネットワークを活かして研究者交流を進める。

 

(c) 災害発生機構の研究と予測: 上記サブ課題の成果を基礎に、様々な災害(強風、豪雨、斜面、河川流量・水資源、洪水・都市水害、高波・高潮等海岸災害)に対応する災害予測モジュール群を作成し、海外研究者とも共同で多様な地域・状況における適用性研究を推進する。災害情報プロダクツ・予測の精度評価を慎重に行い、確度の高い情報を漸次web公開する。

 

⇒ これらの研究の推進にあたり、防災研および生存研の全国共同利用研究所としての機能を活用して国内諸大学と協力し、さらに観測機器開発等を担う産業界、モデル開発を進める国公立研究機関等との有機的研究ネットワークを構築する。

課題(2): 極端気象に関する「環境適応戦略科学」の創成を目指し、国内はもとより、アジアおよびアフリカ域を中心に文理融合研究を進める。

 

(d) 異常気象への環境適応戦略科学: アジア・オセアニア域を中心に、既に極端気象と長期環境変化が社会・文化に悪影響を及ぼしている地域(インド、東南アジア、フィジー)を選び、文理融合型チームにより実態を知る。災害復興に向けた工学的対応策(ハードウェアの建設など)と人間・社会的対応策(生活支援、文化交流、移住計画など)を総合しつつ、環境変化に長期的に対応可能な新たな「環境適応戦略科学」を、当事国の研究者・大学院生、政府関係者、地域住民などとともに提案・創造する。特に、正に文理融合型の「環境適応戦略化学」をアカデミック・ディシプリンとして確立していくことができる若手人材の育成に力を入れる。

 

(e) アフリカにおける慢性的気象ハザードへの環境適応戦略科学: アフリカでは経済の低迷、環境問題、貧困の深刻化、地域紛争などにより人々の生存が著しく脅かされている。中でもサブサハラ・アフリカ(サハラ砂漠以南の地域)は、近年の急激な人口増加と不規則降雨や干ばつなど慢性的な気象ハザードにより、 長い歴史の中で形成された種々の生業複合や相互扶助に裏打ちされた生存基盤が脆弱化している地域である。本件では西アフリカ内陸部(ニジェール)と東アフリカ(ケニア)を対象地域として、慢性気象ハザードの下での生業活動の錯綜、資源利用・生態環境の保全・相互扶助での競合・共生関係、人口増加・人間活動拡大による在来文化や民族間関係の変容、土地資源劣化や地域レジリアンスの脆弱化、といった「砂漠化」と総称される様々な問題を研究する。

 

⇒ これらは自ずと学際的・広領域研究課題を内包しており、極端気象(砂漠化・気候変動)への対処法の確立が求められる。理・工・情報学等との文理融合型研究・教育の絶好の場であり、かつ、学術知見の深化や人材育成さらに具体的対処法の提案を通じて社会的要請に応えうる。

 

課題(1)と課題(2)は、若手研究者や学生が、既存の学問領域の垣根を越えて理工融合及び文理融合研究を推進する On the Job Training の場を提供する。これは、座学のみでないフィールド学習を必修とする「極端気象と適応社会の生存科学」教育ユニットの実践科学教育の舞台となる。

 

研究活動の成果

報告 間瀬教授のグループが文部科学大臣表彰科学技術賞(科学技術振興部門)を受賞(平成24年4月9日)

波浪災害や海難事故を未然に防止するには、住民やユーザーが主体的となって現況をリアルタイムで把握できるようになっていることが、被害を軽減することに繋がる。この度の賞は,最新で適切なオープンソースソフトと最新気象データを有機的に連携させることにより、簡単に、早く、かつ正確な波浪予測ができるシステムの開発、高潮・高波災害が生じた後の災害解析に利用できる波浪推算システムの構築とその精度検証したことが評価されたもので,
1) 高波災害に備える、高波災害から逃げる、
2) 港湾・海洋工事への波情報の提供、
3) 海上事故・海浜事故の防止・軽減、
4) マリンレジャーへの波情報の提供、
5) 海上交通、安全航行への波情報の提供、
6) 漁船の安全操業、
7) 沿岸域の利用、
といった「海の安全」に寄与することができる.

 

評価された成果

【研究成果の貢献】

  1. 平成21年4月15日発刊、毎日新聞(22面)、「巻き網漁船転覆:突然の三角波発生の可能性も」
  2. 平成22年1月13日発刊、日本経済新聞夕刊(19面)、「局地的大波発生か」
  3. 平成22年1月13日発刊、産経新聞,(3面)、「局地的大波発生か 10人乗り漁船転覆で京大防災研分析」
  4. 平成22年1月13日発刊、河北新聞,岩手日報,京都新聞,熊日,山陰中央新報,山陽新聞,山梨日日,神戸新聞,西日本新聞,静岡新聞,千葉日報,大分合同新聞,中日新聞,長崎新聞,東京新聞,徳島新聞,福島新聞,北国富山新聞,(web版)、「漁船事故,局地的な大波発生か 気象データ基に専門家分析」
  5. 平成22年1月15日発刊、毎日新聞(3面)、「第2山田丸遭難:家族が引き揚げを要望 海底に船影確認で/原因は局地的「異常波」直撃か 京大准教授ら分析」
  6. 平成21年11月28日 週刊ダイアモンドNov28号特集記事、p.123、「独自ビジネスモデルで勝負」
  7. 平成20年3月18日、国土交通省高波対策検討委員会、「WEBで公表されている資料」、平成20年に発生した富山県での寄り回り波による被害解析、「委員会で本システムで解析した周辺海域の推定海象結果が利用されている」
  8. 平成22年5月28日、国土交通省運輸安全委員会、第11大栄丸・船舶事故調査報告書
  9. 平成23年2月25日、国土交通省運輸安全委員会、漁船第二山田丸沈没・経過報告
  10. 平成23年4月22日、国土交通省運輸安全委員会、漁船第五十八寿和丸沈没・船舶事故調査報告書

 

【研究論文】

以下の6つの論文を含む計15編の研究論文が受賞の対象となった。

  1. Tracey H. Tom・間瀬 肇・安田誠宏・森 信人:「リアルタイム波浪予測と仮想波高計による配信システムの開発」、海岸工学論文集、第56巻、pp.1471-1475、2009.
  2. Tom, T.H.・Mase, H. and Yasuda, T. : 「Real-time wave prediction using hourly analyzed atmospheric GPV」, Coastal Dynamics 2009, Paper No.1, 2009.
  3. Mase, H.・ Yasuda, T.・ Tom, T. H.・ Tsujio, D. and Mori, N. :「Forecast and Hindcast of Waves Which Caused Coastal Disasters along Toyama Coasts on February 2008」, Proc. of 33rd IAHR Congress, pp.2854-2861, 2009.
  4. 間瀬 肇・Tracey H. Tom・安田誠宏・森 信人:「2008年ハリケーン・アイクによる高波の追算」、海洋開発論文集、Vol.25、pp.897-902、2009.
  5. Tracey H. Tom・池本 藍・間瀬 肇・安田誠宏・森 信人:「台風シーズンにおけるリアルタイム波浪予測と精度検証」、土木学会論文集B2(海岸工学),Vol.66、pp.161-165、2010.
  6. 間瀬 肇・紺野晶裕・森 信人・安田誠宏・Sheng Dong:「洋上ウィンドファームサイトにおける波浪と風の解析」、土木学会論文集B2(海岸工学)、Vol.66、pp.386-390、2010.

 

【平成24年度科学技術分野の文部科学大臣表彰受賞の決定について】

 


 

報告 京都新聞に小林健一郎特定准教授の府南部豪雨に関する記事が掲載されました。

 

【掲載記事および、関連記事】 京都新聞(平成24年8月21日 朝刊)
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京都新聞(平成24年8月21日朝刊1面)


京都新聞(平成24年8月21日朝刊27面)


京都新聞(平成24年8月21日朝刊23面)

 

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